ミュージカル「レベッカ」2026感想|人間の濃さと不穏な音楽が残る舞台

目次

はじめに


ミュージカル「レベッカ」を観てきました。脚本・歌詞、音楽・編曲、原作は次のとおりです。

  • 脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
  • 音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
  • 原作:ダフネ・デュ・モーリア

物語の展開も、人物の感情も、音楽も濃い。今回は最後列での観劇でしたが、満足度はかなり高かったです。
次から次へと空気が変わっていくので、ずっと熱中して観ていました。

体感時間もかなり短かったです。
盛り上がりの波が上手く、「まだ終わらないでくれ」と思っているうちに、また次の展開が来る。
その繰り返しで、最後まで引っ張られました。

クライマックスについては、少し駆け足に感じた部分や、解釈が難しいと感じた部分もありました。
それでも、全体としてはかなり満足度の高い観劇でした。

今回はかなり楽しく観られた回だったので、全体的に好意的な感想になっています。
観劇した回の主なキャストは以下(敬称略)です。

  • マキシム・ド・ウィンター:海宝直人
  • 「わたし」:豊原江理佳
  • ジャック・ファヴェル:石井一彰
  • フランク・クロウリー:俵和也
  • ベン:吉田広大
  • ベアトリス:彩乃かなみ
  • ジャイルズ:港幸樹
  • ヴァン・ホッパー夫人:生田智子
  • ダンヴァース夫人:霧矢大夢
  • ジュリアン大佐:中山昇

ここからは、観劇後に特に印象に残っている人物や音楽について書いていきます。
全員を網羅するというより、自分の中に強く残ったものを拾っていく感想です。

この記事では、物語の大きな結末には詳しく触れませんが、キャラクターや楽曲の印象には触れています。

印象に残った人物について

一番心に残ったのはダンヴァース夫人

今回、一番強く印象に残ったのはダンヴァース夫人です。
とにかく、存在感が凄まじかったです。

「レベッカがすべて」という気迫があり、何があってもぶれない一本の軸を感じました。
あれは愛情なのか、執着なのか、崇拝なのか。一言では説明しきれない関係性でした。

ただ、「狂気」という言葉だけで片づけるには、少し違う気がします。
もちろん異様ではあるのですが、それ以上に、信念の強度を見せつけられたような感覚がありました。

特に印象に残っているのは、ダンヴァース夫人が歌う「Rebecca」です。
「レベーーッカーーー!」と歌い上げる場面は、理屈で「すごい」と思うより先に身体が反応しました。
アドレナリンが上がった時特有の、じわじわした感覚がありました。

舞台上にいるのに、彼女の見ている世界はずっとレベッカに向いている。
その偏りきった感情の濃さに、かなり持っていかれました。

海宝マキシムが予想以上に良かった

観劇前、海宝マキシムについては少し不安もありました。以前に観た「ISSA in Paris」や「イリュージョニスト」では、歌の表現力はすごいのに、自分には強く刺さらなかったからです。

おそらく、歌とは別に役としての演技という部分で、どちらも感情が見えやすいキャラクターではなかったように思います。
何を考えているのかが少しつかみにくい。どこか高い位置から周囲を俯瞰しているようにも見える。
歌での表現は感じつつも、人物の心の内が自分には少し見えにくく、役として強く刺さるところまではいきませんでした。

でも、今回のマキシムはかなり良かったです。
たぶん、これまで観た役は、感情の上下が大きく見えるタイプではなかったのだと思います。
今回のマキシムでは、落ち着きや包容力だけでなく、焦り、未熟さ、激昂まで見えて、その幅が役にとても合っていました。

序盤のマキシムには、年上の男性としての落ち着きや包容力がありました。
感情を簡単には外に出さず、大人として振る舞っている。
そういう演技を海宝さんで観たのは、自分にはかなり新鮮でした。

けれど、物語が進むにつれて、その落ち着きの奥にあるものが少しずつ見えてきます。
普段は抑えている。でも、ある時胸の内があらわれる。
時には、その感情が爆発する。その抑揚が、今回はとても効いていました。

スマートに歌い上げるだけではなく、追い詰められた人間として揺れている。
大人として振る舞っているのに、後悔や迷いを抱えていて、時々抑えきれなくなる。
その落差が、今回のマキシムという人物にとても合っていたように感じました。

人気の役者さんなのに自分には合わないのかも、と不安になっていたところ、「えっ、当たりだ。良すぎる」となりました。
歌が上手いこと以上に、抑えた芝居と、感情が噴き出す落差が良かったのだと思います。
今回のマキシムで、自分の中の海宝さんの印象がかなり変わりました。

「わたし」は応援したくなる主人公だった

ヒロインである「わたし」も良かったです。
最初は弱くて、オドオドしていて、自分に自信がない。
でも、そこから少しずつ変わっていく流れがあり、自然と応援したくなる主人公でした。

マンダレイという場所の空気も、周囲の人物たちの圧もかなり強いので、最初の頼りなさがあるからこそ、その中で変わっていく姿が見えやすかったのだと思います。

一方で、歌声については、豊原江理佳さんは「SIX」のような強い役の方が、個人的にはより好みかもしれないとも思いました。ただ、今回の「わたし」としての成長や不安定さは、作品の中でしっかり機能していたと思います。
弱さから始まる主人公だからこそ、周囲の濃さやマンダレイの不穏さがより強く見えました。

ジャックが予想外にヒットした

予想外に好きだったのがジャックです。
キザで、色気があって、少しだらしなくて、飄々としている。
そのキャラクター性がかなり魅力的でした。

特に印象に残っているのは、声の使い方と動きです。
下に響かせるような話し方に加えて、身のこなしにも色気がありました。

ただ脱力しているというより、計算された色気がある。
軽そうに見えるのに、視線や動き、声の置き方でしっかり印象を残してくる。
そこがジャックという人物にとても合っていました。

軽さもあるのに、妙な生々しさがある。
ただの悪役とも、ただの色男とも違う、少し湿度のある存在感がありました。

そして良かったのは、台詞では余裕や色気を見せつつ、歌に入るとちゃんとミュージカルらしく歌い上げてくれるところです。普段の話し方や動きでは飄々としているのに、歌うと舞台上の存在感が一気に増す。
その切り替わりが、ジャックという人物の胡散臭さや魅力をより強くしていたように感じました。

ベンの声がとても綺麗だった

ベンもかなり印象に残りました。派手な役ではないのですが、とにかく声が綺麗でした。
独特の口調で歌われる旋律が、数日経っても一番耳に残っていました。
むしろ、ダンヴァース夫人の「Rebecca」よりも、家で自然に口ずさんでいたのはベンの歌だったかもしれません。

ダンヴァース夫人の曲は、場面として強烈に印象に残っています。
一方でベンの歌は、観劇後の生活の中にふっと残るような曲でした。

あとから海外版の音源も聴いてみたのですが、巻き舌や歌い方の癖が強く、劇場で聴いた日本版のベンとは少し印象が違いました。私が劇場で印象に残ったベンは、もっと素朴で、どこかかわいらしさもある存在でした。
不穏な物語の中にいる人物なのに、声がとても綺麗で、その素朴さと歌声が妙に耳に残りました。

派手に場を支配するタイプではないのに、不思議な魅力がある。
観劇後に思い返すとかなり残っている。
自分でも思った以上に、ベンが好きだったのだと思います。

マキシムの妹夫婦も良かった

マキシムの妹夫婦も良かったです。

登場時間はメインの人物たちほど長くありませんが、二人の演技と歌がかなり印象に残りました。
脇キャラクターなのが少し惜しいくらいで、もう少し観ていたかったです。

たしか一度しか歌わなかったと思うのですが、その一場面でちゃんと印象を残していくのが良かったです。

作品全体が重く、不穏で、感情の濃い方向へ進んでいく中で、二人が出てくる場面には少し違う空気がありました。
それでいて、ただの息抜きではなく、舞台上の人物としてちゃんと立っていたのが印象的でした。

劇全体について

不穏な音楽が頭から離れなかった

音楽では、使用人たちのシーンで流れる、ミステリー感やサスペンス感のある曲が特に好きでした。
単に曲が良いというより、「何か起こりそう」という空気を作る力がありました。
舞台上にいる人たちの感情だけでなく、屋敷そのものに秘密があるように感じさせる音楽だったと思います。

観劇後もしばらく頭に残っていて、曲名を探してしまいました。
個人的に印象に残った使用人曲は、次の2曲です。

・Die neue Mrs. de Winter
・Strandgut

どちらも、マンダレイの屋敷そのものがこちらを見ているような、ミステリー感とサスペンス感のある曲でした。
続いて、登場人物の曲で印象に残ったのは次の2曲です。

  • ベン「Sie’s fort/She’s Gone」:派手な曲ではないのに、独特の口調と綺麗な歌声が観劇後も頭に残りました。
  • ダンヴァース夫人「Rebecca」:場面として強烈で、とにかく心に響きました。


ダンヴァース夫人の「Rebecca」は代表的な曲として強烈ですが、使用人たちの曲は屋敷の不穏さが残り、ベンの曲は帰ってからも自然に口ずさんでしまう曲でした。
それぞれ違う残り方をしていて、観劇後に音源を探してしまうくらいには、音楽の印象も強かったです。

ヴァン・ホッパー夫人がいるから空気が重くなりすぎない

ヴァン・ホッパー夫人については、人物単体の感想というより、作品全体の空気に関わる印象が強かったため、こちらに書きます。重い空気を少し動かしてくれる存在として、かなり印象に残りました。

「レベッカ」は全体的に、不穏で、重くて、感情の濃い作品です。
その中でヴァン・ホッパー夫人がいることで、舞台がずっとシリアスになりすぎないところが良かったです。

明るさというより、少し騒がしくて、現実的で、遠慮のない存在。
その空気があることで、作品全体の重さに少し抜け道ができていたように感じました。

特に印象に残っているのは、周囲が静まり返る中で、真っ先に疑問を口にできるところです。
ある場面では、彼女が声を出すことで、観客側の「どういうこと?」という感覚も少し代弁されていたように思います。

重い空気の中に入り込める人物でありながら、作品の緊張感を壊しすぎない。
そのバランスがかなり良かったです。

何より、人物としてそこにいたことが刺さった

今回、自分に刺さったポイントを考えると、歌そのものの魅力だけではありませんでした。
もちろん、歌の力はとても大きかったです。
それでも特に印象に残ったのは、その人がそのキャラクターとして舞台上に存在していたことでした。

  • ダンヴァース夫人の執着。
  • マキシムの抑えた感情と、その爆発。
  • ジャックの計算された色気。
  • ベンの素朴さと綺麗な声。
  • マキシムの妹夫婦の、脇にいるのが惜しいくらいの演技と歌。

そういう、人間そのものへの感想が多く残っています。

「レベッカ」は、感情の濃い作品でした。愛情なのか、執着なのか、罪悪感なのか、恐れなのか。
簡単には整理できない感情が、舞台上で何層にも重なっていました。
だからこそ、最後まで目が離せなかったのだと思います。

これから観る人へ

公演地や日程によっては、まだチケットを探せる可能性があるかもしれません。
気になる方は、公式サイトや各プレイガイドで最新の販売状況を確認してみてください。

また、本作はこれまでも再演されている作品なので、タイミングが合わなくても、観られる機会があるかもしれません。
重い感情や不穏な空気のあるミュージカルが好きな方には、かなり印象に残る作品だと思います。

まとめ

ミュージカル「レベッカ」は、人間の感情や執着が濃くて、最後まで夢中で見続けてしまう作品でした。
少し駆け足に感じる部分や、解釈が難しい部分もありました。
それでも、観劇後にこれだけ人物の印象が残っている時点で、自分にとってはかなり満足度の高い舞台だったと思います。

特にダンヴァース夫人の存在感は忘れがたいです。ただ、あとから思い返すと、マキシムの抑えた演技と歌での爆発、ベンの綺麗な声、ジャックの計算された色気、使用人たちの不穏な音楽もかなり残っています。
物語を観たというより、強い感情の渦と、マンダレイの不穏な空気に巻き込まれたような観劇でした。

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