はじめに
先日、ミュージカル「ファニー・ガール」を観ました。
観ていて最初に感じたのは、「CHICAGO」という作品と、やや似た空気があることでした。
例えば、どちらもショーとして見せる場面があります。
また、「ジャズ」や「スウィング」を思わせる音楽が使われています。
個人的に「CHICAGO」があまり好みでないので、「得意ではないかもしれない」と思いました。
しかし実際は、複数の音楽ジャンルが含まれていて、曲調に幅があるように感じました。
そのためか、見ているうちに不安も解消されていきました。
※以下、ストーリーのネタバレを含みます。
登場人物の印象変化
主人公のファニー
物語の前半で感じたのは、主人公に対して感情移入ができないことでした。
というより、最後まで共感することはありませんでした。
ファニーのようなタイプは、自分とはかなり違います。
残念ながら、好きな人物像でもありません。
もし脚本を書くとしても、個人的には描きたいと感じないと思います。
例えば、ファニーは「ニックと一緒にいたい」というだけで、仲間に迷惑をかけてもついていきます。
そこでは、仲間の側になって「嘘だろ」と思ってしまう等、気持ちを重ねられませんでした。
ファニー本人としては、単純に「好きな人と一緒にいたい」という気持ちなのでしょう。
その後の展開を見ていると、ファニーは周囲に恵まれた人だと感じました。
仕事を辞めても、後でまた戻ることができた。周りには支えてくれる人がいた。
「ファニー・ガール」というより周りに恵まれた「ラッキー・ガール」という印象を受けました。
相手役のニック
一方、ニックは最初怪しく見えていました。
しかし、思っていたより根は普通だと感じました。
自分の状態を素直に伝えて「ちょっと時間をくれ」と言う。
一方で、主人公がついて来れば嬉しそうにしたり、愛情もきちんと示したりします。
ちゃんと遊びではなく、主人公を好きなんだと思えました。
また、ニックは一緒に巡業する劇団員ではなく、ギャンブラーです。
さらに実業家や投資家でもあり、その都度自分が行くべき場所へ一人で動いていく人です。
ファニーとは、ニックが都市を動いている中で、偶然同じ都市にいたことで関係を深めていきます。
その後、ファニーはニックについていき、二人は結婚します。ここまではかなり勢いのある恋愛です。
徐々に価値観の違いが見えていきますが、詳細は次の項目から話していきます。
テーマについて
「仕事」か「私」か
作品のテーマの一つだと思いますが、こういった話がありました。
ファニーが舞台復帰することになった時「家にいてほしい」ことをニックに伝えていました。
ただ、ある日のニックは「どうしても行かなければならない」ことを伝えます。
そこでニックは、ファニーの母親に「頼めないか」と相談します。
母親は了承しましたが、ファニーはニックを止めました。
母親がファニーをたしなめても「初日公演にはいつも来ているのに」と、ファニーは聞きません。
最初は「仕事」と「家庭」かと思いきや、ファニー側の本質は「仕事」と「私」だと感じました。
ここで、ニック側に気持ちが寄りました。
「毎回ではないし、仕事ならしょうがない」と思ってしまったんです。
遊びに行くわけでも、彼女を大切にしていないわけでもありません。
どうしてもその日がチャンスで、母親に頼む代替案を出して了承されています。
それでもファニーが止めてしまう。こうなると感情面の話です。
価値観の相違
引き留められてから、ニックは違和感を覚え、自分を失っていきます。
ニックからすると、自分の仕事や生き方を下に見られ、認めてもらえないように感じてしまう。
私も「仕事」が生きがいの一つなので、完全にニック側から二人を見るようになっていました。
さらにファニーはその後、お金に困ったニックに対し、次のような考えを示します。
「私のお金を使えばいい。お金ならあるから稼ぐ必要はない」
一緒にいたい気持ちからでしょうが、ニックは自立していたい人なので、溝は深まります。
二人とも相手を好きなのに、愛情を示す手段も違いました。
ファニーは、一緒に時間を過ごすこと。
ニックは、家族からもらうのではなく、自分から特別を与えること。
ここが、二人の大きなすれ違いの一つだと感じました。
「働かなくていい」と言われても、問題の解決になりません。
そして最後。ファニーは「自分が変わる」と言います。
それに対してニックは「君は変われない。自分は君に何をしてあげられたのか」と言います。
ファニーが子どもができたこと等を挙げると、ニックは離別を告げました。
大切なものは人それぞれ
嫌いになったわけではなく、このまま一緒にいれば駄目になってしまう。
だから、一緒にいることはできない。
「好き」という気持ちと、「このままではいられない」という気持ちが同時にある。
これが、二人の別れの一番辛いところでした。
ファニーが悪い、ニックが正しい、ということではありませんでした。
互いが大切にしているものを、最後までうまく尊重し合えなかった。
そして最後には、離れるしかなくなってしまった。
最初はファニー側から観ていて、感情移入が難しかったです。
しかし、ニック側に視点を移したら、最後には泣いていました。
二人のすれ違いの物語として深く残ったのだと思います。
演者について
主演のみ、短く印象をまとめますが、助演で個人的に「良いな」と感じた方も二人ほどいました。
ファニーが花嫁を演じる場面で歌っていた方と、母親の友達(赤い服の方)です。
声が良く、聞き取りやすい上、歌も上手くて印象的でした。
望海風斗さん
望海風斗さんは、歌はものすごく上手かったです。
ただ、ファニーとして演じる声は、聴きづらく感じるところもありました。
例えば、アメリカっぽい歌い回しに加えて、ハスキーな声や、コミカルに崩したような声がありました。
それが時々、脇役のコミカルなキャラクターのように聞こえてしまったのだと思います。
一方で、そうした「ファニーらしい」歌い方をしていない場面では、本当に上手い。
後半になるほど、私はかなり聴きやすく感じました。
坂本昌行さん
坂本昌行さんが演じるニックは「この役にかなり合っている」と感じました。
立ち振る舞い、セリフ、人物像がとにかく自然でした。
舞台に出てくると、スマートで洗練された雰囲気があります。
ギャンブラーでありながら、投資家としても動くニックにぴったりでした。
第二幕でダンスの場面がありますが、個人的にはほかにも見たかったです。
その場面では、スウィングの方も含めて格好よかったです。

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