ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」2025感想|初日と千秋楽で印象が変わった観劇体験

目次

はじめに

2025年に観劇したミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」について、遅ればせながら書いていきます。
自分にとって忘れられない観劇体験だったため、当時のことを思い出しながらまとめてみました。

私はこの作品を、初日公演と千秋楽の二回観劇しました。同じ公演を二回観に行ったのは、たぶんこれが初めてです。
一回目は、正直あまり刺さりませんでした。
曲は悪くないはずなのに、観終わったあともあまり残らず、「こんなものか」という感覚で終わりました。

けれど、二回目を観たあと、この作品への印象はかなり変わりました。
同じ作品なのに、席やキャスト、自分の受け取り方によって、こんなにも見え方が変わることがあるのか。
「ラブ・ネバー・ダイ」は、自分が初めてそう感じた観劇体験でした。

初日から千秋楽まで

初日の後方席は、あまり刺さらなかった

一回目に観たのは初日公演でした。
キャスト(敬称略)は、次の組み合わせです。

  • ファントム:市村正親
  • クリスティーヌ:平原綾香
  • ラウル:田代万里生
  • メグ・ジリー:星風まどか
  • マダム・ジリー:香寿たつき
  • グスタフ:小野桜介

席は後ろの方でした。
観終わった直後の感想は、かなり淡白だったと思います。
「終わった」「こんな感じか」という感じでした。

曲は悪くないはずなのに、あまり自分の中に残りませんでした。
一回目だけで終わっていたら、たぶん自分の中では「あまり刺さらなかった作品」として記憶していたと思います。
ただ、この一回目については、今思えば、いろいろな要素が重なっていました。

  • 初日公演だったこと。
  • 後方席だったこと。
  • 機材トラブルがあったこと。

その日は、トラブルで見えないはずのものが見えたり、途中で舞台が止まったりする場面もありました。
舞台に入り込む前に、少し現実に戻されてしまった感覚はあったと思います。

もちろん、それだけが理由とは言い切れません。でも、舞台美術や照明、空気感も含めて飲み込まれるタイプの作品だと思うので、そこで没入感が削がれた影響はあったのかもしれません。

また、初日に観たキャストの表現が、自分にはかなりまっすぐに見えた部分もありました。
ファントムの情けなさや、ラウルのどうしようもなさが、そのまま強く見えたのかもしれません。

それはそれで、作品として成立している見え方だったと思います。
ただ、そのときの自分には、あまり刺さりませんでした。

再度、観に行こうと思ったきっかけ

一回目ではあまり刺さらなかったのですが、その後、ダブルキャストやトリプルキャストが気になりました。

別のキャストだとどう見えるのだろう。そう思って動画を見たところ、かなり衝撃を受けました。
「えっ、行く。行きます」という感じで、二回目を観に行くことにしました。

二回目は、ダブルキャスト・トリプルキャストをかなり大きく変えました。
主要キャストを次の6人に変えて、千秋楽を観劇しました。

  • ファントム:橋本さとし
  • クリスティーヌ:笹本玲奈
  • ラウル:加藤和樹
  • メグ・ジリー:小南満佑子
  • マダム・ジリー:春野寿美礼
  • グスタフ:後藤海喜哉

この二回目が、自分にとっての「ラブ・ネバー・ダイ」の入口になりました。

千秋楽の前方席は、かなり刺さった

二回目は千秋楽でした。席も、かなり前方でした。
この「前方席で観た」ということは、自分にとってかなり大きかったと思います。

後ろの席だと、どうしても少し俯瞰してしまいます。
舞台全体は見やすいけれど、人物の感情にのめり込むというより、少し距離を取って見てしまうところがあります。

でも、「ラブ・ネバー・ダイ」は、たぶんファントムをどこかでかっこいい、抗えない、と思えるくらいのめり込まないと、自分には楽しみきれない作品だったのだと思います。これは「オペラ座の怪人」でも感じていたことです。

特に、橋本ファントムと加藤ラウルを前方席で観られたことが大きかったです。
ちなみに、石丸幹二さんのファントムは観られていません。
そのため、ここで書いているのは、市村さんと橋本さんの回を観たうえでの個人的な感想です。

市村ファントムは、ロックナンバーでも「ザ・ミュージカル」という感じでした。
舞台の中でしっかり聴かせるファントムという印象です。

一方で、橋本ファントムには、よりロックを感じました。
歌い方や声の出し方に、自分の好きなロックっぽさがありました。

「ラブ・ネバー・ダイ」は、意外とロック調なナンバーが多い作品だと思います。
その方向性と、橋本ファントムの歌い方が、自分にはかなり合っていました。

刺さった人物のポイントについて

ファントムに抗えない魅力を感じられるか

「ラブ・ネバー・ダイ」は、ファントムに抗えない魅力を感じられるかどうかで、かなり印象が変わる作品だと思います。
一回目を観たとき、私はファントムについて「なんか情けないな」と思っていました。

それが間違いだったとは思っていません。
「ラブ・ネバー・ダイ」のファントムには、実際に情けないところがあると思います。

でも、二回目では、その情けなさや執着込みで、人物としての吸引力を感じられました。
また、「オペラ座の怪人」を映画版で見ていた影響もあるのかもしれませんが、長身であることや体格の良さも魅力に繋がっていました。持って生まれたものではありますが、舞台上での存在感や説得力にかなり影響していたように感じました。

前作でも今作でも、ファントムにまったく魅力を感じられないと、クリスティーヌが薄っぺらく見えてしまう気がします。
「なんでそんな男に揺れるんだ」と思ってしまう。でもそう思わせないかっこよさを感じました。
そして、「これなら惹かれることもあるか」と思える魅力があると、クリスティーヌの見え方も変わります。

ファントムが立派な人間に見えたわけではありません。情けなさが消えたわけでもありません。
ただ、その情けなさを押しのける、危うさの中の魅力を受け取れるかどうか。
そこが、自分にとってこの作品を楽しめるかどうかの入口だったのだと思います。

ラウルも、ダメさ込みで受け取れるか

ラウルについても、一回目と二回目で印象が変わりました。

一回目の田代ラウルは、本当にダメな人に見えました。
「ラウルもずいぶん落ちぶれてしまったな……」と思い、がっかりした記憶があります。

一方で、二回目の加藤ラウルには、何か悔やんでいるような真剣さを感じました。
もちろんダメではある。でも、どこか好きになれる余地がありました。

加藤ラウルは、今思えば、最初からそんな意識で演じられていたのかもしれませんが、ずっとどこか真摯さがありました。
前方席で表情や歌の圧を近くで受け取ったことで、彼のダメさや弱さも、人物としての熱に感じられたこともありそうです。

ファントムもラウルも、一回目に見えた姿が間違っていたとは思いません。
情けないファントム。ダメなラウル。それはそれで、作品として成立している見え方だと思います。
ただ、自分は二回目の組み合わせで見えた人物の解釈と、前方席という距離感で、この作品にのめり込めたのだと思います。

音楽と作品全体について

好きだった曲

二回目の観劇後、音楽が好きすぎて、家に帰ってから公式動画を何度も見返しました。
音楽は、前作「オペラ座の怪人」と同じくアンドリュー・ロイド=ウェバーです。
特に印象に残っているのは、次の3曲です。

  • 負ければ地獄
  • 月のない夜
  • 美の真実

この3曲は、本当によく聴きました。
今ではようやく冷静になっていますが、当時はかなり橋本ファントムにハマっていたと思います。

公式のダイジェスト映像が多かったのもありがたかったです。
観劇後に何度も聴き返せたおかげで、今でもふと口ずさめるくらい印象に残っています。

特に「負ければ地獄」は、何度も見返しました。
ファントムとラウルの掛け合い曲で、二人の対立や意地、焦りのようなものが強く出るナンバーです。
橋本ファントムと加藤ラウルの組み合わせで観たことで、二人の張り合いがかなり強く伝わってきました。

一回目では、ファントムは情けなく、ラウルはただダメな男に見えていました。
けれど二回目では、この曲の中で、二人の執着や負けたくなさが舞台上の熱として感じられました。

「月のない夜」も好きです。ファントムとクリスティーヌの掛け合い曲です。
ファントムの魅力を受け取れているかどうかで、大きく印象が変わる曲かもしれません。ファントムの存在感や、クリスティーヌとの駆け引きが「かっこいい」と思えることで、この曲の見え方も変わりました。

「美の真実」も印象に残っています。きれいで穏やかな曲というより、怪しさとロックという珍しい曲だと感じました。
この曲の空気は、前作とは違う、独自路線の作品であることを強く感じさせる部分でもあったと思います。

続編としての印象

「ラブ・ネバー・ダイ」は、「オペラ座の怪人」の続編として観ると、かなり好みが分かれる作品だと思います。
人物の描き方も、舞台の空気も、音楽の方向性も、前作と同じ余韻をそのまま味わう作品ではないように感じました。

特にファントムは情けないところが出てくる。ラウルもかなりダメな面が見えてきていました。
一方で、クリスティーヌの揺れ方や、ファントムに魅力を感じられるかどうかは前作以上に大事だと感じました。
特にロックなナンバーや、人物のどうしようもなさを強く見せるところは、この作品ならではの濃さだったと思います。

前作と同じものを期待すると戸惑う。でも、別の方向へ進んだ作品として観ると、刺さる瞬間がある。
自分にとっての「ラブ・ネバー・ダイ」は、そういう作品でした。

おわりに

「ラブ・ネバー・ダイ」は、一回目だけで終わっていたら、たぶん自分の中ではあまり刺さらなかった作品でした。
けれど、二回目を観たことで印象が大きく変わりました。

初日では掴めなかったものが、千秋楽で一気に開いた。そんな観劇体験でした。
観劇は、一回で諦めると勿体ない場合もあるのかもしれません。

もちろん、すべての作品を何度も観られるわけではありません。
それでも、キャストや席、自分の気持ちの入り方によって、同じ作品がまったく違って見えることがある。

「ラブ・ネバー・ダイ」は、自分にとってそれを強く感じた作品でした。

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